【漫画レビュー】『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』

【漫画レビュー】『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』

 

オウム真理教の報道にて、地下鉄サリン事件など一連の流れを知らない子ども世代が”二世”として入信しているようです。

そのニュースを見て、ふとこの漫画を思い出し、改めて読み返しました。

 

 

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『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』 概要

『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』は、元々は作者の いしいさや先生がTwitter上で公開していた漫画です。

ネット上でとても反響が大きかったため、講談社から いしい先生に声がかかり、単行本化したという経緯があります。

現在「ヤングマガジンサード」にてフルカラー版が連載中です。

 

作者・いしいさや先生の生い立ち

いしい先生は、母親が熱心なエホバ教徒である「二世信者」でした。

作中ではエホバ教徒であることは明言されていませんが、「輸血禁止」や「異教との交流を厳しく禁じる」などの教義から推測するに、エホバの証人の信者であったことが分かります。

 

 

礼拝や毎日の聖書通読などの義務、「自慰・婚前交渉禁止」「エホバ信者以外との異性交流はダメ」「親に逆らってはいけない」という約束があり、これを破るとズボンを脱がされ、丸出しの下半身をムチで叩かれていたそうです。

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エホバ教徒以外から見ればまさにクレイジーなのですが、信者たちにとっては死後に「楽園」へ行くための修行として、ごく当然に受け入れられるものです。

いしい先生は、幼少期から普通の生活でない、宗教中心の生活であることに薄々おかしさを感じていたようです。

しかし、高校卒業直前まではそれを口に出すことが出来ず、母親の言う通りに礼拝に行っていたといいます。

恐らく、「親に逆らってはいけない」というエホバの教義が影響したのでしょう。

ある日、学校の図書館で宗教勧誘する女の子について書かれている小説に出会います。

そこで初めて、普通の人から見たその異常さを知る事になり、自分の抱えていたおかしさは正しいものだったと確信を得るようになります。

 

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感想:「二世信者」には外部からの手助けが必要

結局いしい先生は、高校卒業直前に宗教から脱することが出来ました。

そのおかげで大学進学という選択肢も見えてきて、教義に縛られない「普通」の生活に戻れたのです。

しかし、これは本当に運のいい例で、実際に二世信者の中には、学力が優れていても親が大学進学に否定的で、高校卒業後はその宗教の布教活動のために一生を捧げる人もいるようです。

私が注目したのは、いしい先生が自分から宗教を辞めることを言い出せたという点です。とても勇気が必要だったことと思います。

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(『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』その11 楽園に行けなくても|p.137)

いしい先生がこのようにできたのは、祖父、父親など、信者でない人が周囲にいたからではないでしょうか。

もし家族ぐるみで入信していた場合には、なかなかこうはいかないのが現実です。

さらに、作中では いしい先生が宗教から脱した後の苦悩についても描かれています。

疑問を感じていたとはいえ、生まれてからこの方エホバの教えを厳格に守って来た彼女にとって、日常生活は罪悪感の塊でした。

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 (『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』その12 自由になれたら|p.142)

Amazonレビューを見てみると、いしい先生と同じように二世信者として生まれ、そこから脱した人たちの同じような苦悩がたくさん書かれています。

エホバの家庭で育ちました。今はエホバをやめているのに、もがけばもがくほど、苦しく、その気持ちもそのまま代弁するかのように書かれていて、とても嬉しかったです!

別宗教の二世です。この漫画に書いてあることほど厳しいことはありませんでしたが、子供の思想が支配され抑圧されてしまう様子は非常に共感できるものでした。

人間社会がある限り宗教はなくならないし、どんどん新しい宗教も出てくるでしょう。

だからこそ、子どもにも宗教の選択権はあってもいいと考えますし、もし周囲に宗教に取り込まれた二世信者の子どもがいれば、誰かが導いてあげることも重要なのでは?

そう強く感じさせる漫画でした。

 

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