【感想】『こどものじかん』生き辛さを解説してくれる名作

【感想】『こどものじかん』生き辛さを解説してくれる名作

 

 

 

こんにちは、オトメです!

先日改めて『こどものじかん』を読んだのですが……

 やっぱこれ名作じゃね??

これを機に、何回読んでも面白い『こどものじかん』のレビューを書いておきたいと思います。

これほど読むたびに新しい解釈が生まれる漫画は、そうそうないです……。

※最終巻のネタバレがあるので、未読の方は閲覧に気を付けて下さい。

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『こどものじかん』 とは?

感想・レビューだけ読みたい方は飛ばしちゃってください!

作品概要

私屋カヲル先生による、女子小学生と新米男性教師のラブコメ。

2005年から2013年までコミックハイ!にて連載されていました。

略称は『こじか』。

一応ラブコメという体ではありますが、主人公のりんを含め、その周囲の人間が成長する物語でもあります。(ていうかそっちの方がメイン?)

 

「いかがわしい」ことで有名だった

連載が始まって当初、恐らく4巻目ぐらいまでは、その作品テイストからロリコン漫画と揶揄されていました。

まあ、耳年増なりんがウブな新米教師の青木を言葉でからかうというキャラクターがある以上、そうならざるを得なかったのでしょうが。

おかげでエロ目的で購入する大人たちが多かったようですが、巻が進んでいくごとに話はシリアスメインになっていきます。

とはいえ、時々下ネタ系のギャグが入るお陰で、重い命題を背負った作品の雰囲気が中和されていたような感じはあります。

 

 

『こどものじかん』感想

本題。 『こどものじかん』の感想です。

 

理不尽をきちんと描いている作品

ラブコメ漫画にありがちなのが「ご都合主義」。

制作側は物語を大団円で終わらせるためにこうしたストーリー展開をすることがありますが、一気に話が安っぽくなるので、私は好きではありません。

私が何年も『こじか』を愛読しているのは、現実の理不尽さをきちんと受け入れているところにあります。

特に私が好きなキャラクターである白井先生は、母親との関係が上手くいかないまま、最終巻で子どもを持ち、親になりました。

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(画像出典:こどものじかん 13巻)

生まれた子供が息子でよかった、娘だったら自分の母と同じことをしてしまいそうと不安を漏らします。

漫画では白井先生の人生はここで完結しています。

しかし、彼女が実在の人物だとしたら、この先も母娘間のミソジニー*1と葛藤していくことになります。

そんな彼女に、高校生になった教え子の黒が掛けたエールがとても印象的でした。

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(画像出典:こどものじかん 13巻)

すべてをハッピーエンドで終わらせるのではなく、キャラクターたちが世の中の理不尽と向き合い、克服していく様子がきちんと描かれています。

それが、この作品の一番の魅力だな、と私は感じます。

 

キャラへ感情移入せざるを得ない

本作品では、いろいろな立場の人間が出てきます。

小学生、その保護者、そして教師。

特に、メインヒロインの3人の家庭が、いわゆる「普通の家庭」ではないのが特徴的だと思います。

りんの家庭は、シングルマザーであったりんの母親を亡くした、いとこであり恋人のレイジと残された子どもであるりんの「いびつな家庭」。

黒の家庭は、離婚で父親がいない母子家庭。ただし、超がつくほどのお金持ち。

美々の家庭は、父親が単身赴任で不在。一見「普通の家庭」のように思えるが、美々の母は息子のみを溺愛し、2対1に分裂した家庭。

このように、「普通の家庭」過ぎないことが、物語のリアリティをより増長させ、読者が感情移入しやすくなっているような気がします。

……作者の私屋先生には このような意図はないだろうと思いますが。

 

美々と白井先生に感情移入

個人的に、美々と白井先生に感情移入してしまいました。

二人の共通点は、優等生で母親との関係が上手くいっていないことです。

美々はクラスきっての優等生です。

不登校歴がありましたが、塾できちんと勉強をしていたため、テストは常に100点。

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(画像出典:こどものじかん 1巻)

しかし、彼女の母は兄をひいきし、(無自覚かどうかは不明ですが、)美々に愛情を注いでいません。父親が単身赴任であることも相まって、家庭で孤立しているような状況です。

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(画像出典:こどものじかん 12巻)

美々の兄が中学受験に失敗したことから、母親は美々の受験に否定的でした。

その後、青木先生の助けにより、美々は無事に中学受験をし、私立の女子中に合格出来ました。

しかし、その後の母親との関係は順調でないことが後日談で描かれています。

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(画像出典:こどものじかん 13巻)

一方の白井先生も、同様に優秀な女子学生でした。両親が教員という家庭環境が影響しているようです。

なので、物語初めではかなり毒気が強い「お局様的キャラクター」として描かれていました。

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(画像出典:こどものじかん 1巻)

ですが、黒や同僚の小矢島先生との関わりを通して、その性格がだんだんと柔らかくなっていきます。

彼女は、「不純異性交遊をしてはいけない」という両親の厳しい雰囲気を肌で感じ取り、思春期に異性と関わらなかった結果、人との関わり方が分からなくなってしまった女性の典型例です。

しかし、その後、小矢島先生との恋愛を通じて自身を開放していく様子は、この作品の中で屈指の成長物語です。

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(画像出典:こどものじかん 8巻)

もちろん、彼女は美々と同様、母親との関係に折り合いがついたわけではありません。

きっと、許せない昔の仕打ちもたくさんあることでしょう。

しかし、先述のように、なんとか理不尽を乗り越えて克服しようと、あがいているのです。

美々と白井先生に共通するのは、「母・娘のミソジニー」です。

母親世代と娘世代では、理想とする女性像が異なるために、進路の取り方・結婚相手の選び方などで、意見の食い違いが生じることがしばしばあります。

特に白井先生の母親は、結婚相手の年収を気にしたり、自身と同じ職業を選択させたりしました。

これは、娘に「女としての役割(=結婚)」と「男としての役割(=堅実な職業で稼ぎを得る)」の両方を背負わせた結果なのではないでしょうか?

もっとも、それが白井先生の母親嫌いを深める原因となってしまいましたが。

美々に関しても、母親側の娘に対する無意識のミソジニーが存在していたのでしょう。

作中では美々の家庭について深くまでは描かれていないのでほぼ推測になりますが、何かしらの理由があって、母親には美々を愛せない(=娘の自己実現を拒む感情があった)のかもしれません。

それを日々肌で感じ取って生きている美々が、生き辛さを感じるのは、至極当然のことだと思います。

 

まとめ:生き辛さを感じたら読んでほしい

この漫画は、単なる「萌え漫画」ではありません。

人がなぜ生き辛いのかを、小学生やその保護者、教師など、さまざまな立場から考察していった作品です。

母を愛したレイジにいつまでも母を忘れないでほしいと願うりん、そのりんと母親を同一視するレイジ。

兄ばかりをひいきする母親に胸のもやもやを抱える美々、一人っ子で母親が大好きだが仕事で忙しく構ってくれない寂しさを感じる黒。

そして、こども時代に優等生でいるように努め、反抗期がなかった結果、人との関わり方が分からなくなった白井先生。

世の中には様々な立場の人がいると思いますが、人間関係を多角的に描いた『こじか』では、必ず感情移入できるキャラクターが見つかるのではないのでしょうか?

生き辛さを感じたら読んでほしい作品だな、と思います。

 

*1:女ぎらい

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